生まれていない胎児だって相続人
被相続人の子供は、もちろん相続権を持っています。それではまだ生まれていない、お母さんのおなかの中にいる胎児は相続人になれるのでしょうか。この答えはイエスです。日本国民は、憲法によって基本的人権が与えられています。では日本国民と認められる人は誰かというと、これは間違いなく日本国籍を有する人ということになります。通常子供は、出生届を出すことで日本国籍を得ますから、生まれていない胎児には国籍は与えられません。日本国民では「まだ」ない胎児、この胎児が持つ権利は一見なさそうですが、実は相続権は持っています。胎児は通常、生まれてくるまでは人権を持つ「人」ではありません。ですが相続については、明確に権利を持つ「人」として扱われることになっています。というより、民法第886条では、「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」とされています。つまり、生まれてはいないけれど、生まれたと仮定することができます。これは、父親が不慮の事故などで亡くなったときに、遺産を相続できないというような理不尽を無くすために作られています。
といっても、実際問題、胎児が無事に生まれてこなければ、この仮定は意味をなしません。この場合、実際に死産だったりして子供が生まれなかった場合に、相続権を無くすことになります。例えば、法定相続では、第一順位は配偶者と子になっています。子供がいなければ、被相続人の直系卑属が遺産を相続することができますが、配偶者が被相続人の子供を妊娠していれば、被相続人の親などは相続権を得ることができません。不慮の事故などで生まれる前に、父親を失った子供の相続権を認めるというのは、当然といえば当然のことでもあります。仮に子供が「生まれなかった」場合に、ようやく第2順位の相続権が発生するのです。ですから、被相続人に、まだ生まれていない子供がいる場合は、子供が生まれるまでは相続人全員が話し合う必要がある遺産分割協議も行えません。もちろん生まれてすぐの赤ちゃんが、自分の相続権を主張することはできませんが、この場合は母親が代理として相続権を主張することができます。